羽ひらく前の時空(とき)

詩誌『折々の』No61 2024年3月1日 発行

今回は「雨蛙」という詩を載せています。

「雨蛙」

一擲の水音は瞬時に 耳を閉じ込める

かえる 蛙 鳴くなよ かえる

水田に囲まれた
ちいさな家で暮らし始めたころ
わたしは眠れないと言ってはよく泣いた

かえる 蛙 鳴くなら かえる

ひろい水田に囲まれた
灯りの乏しい夜に蛙はよく泣いた
わたしは暫くちいさな家から離れていた

静かな雨が降り続き
そのころ
わたしは帰りたいと言ってはよく泣いた

         「雨蛙」より部分
KotohaMatsuo
  • KotohaMatsuo
  • ことばの港はみえない港。
    日常のさまざまな風景に
    錨を降ろし
    船をやすめ
    柔らかな風を感じる
    穏やかなひととき

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