分水嶺

河の遥か、山稜を仰ぐ

瞳は過去をじっと見つめている

降りし雨のその色は

違えておればと

地は幾度も願い

しかし草木は色褪せ倒れていった

一粒の雨は纏まり水脈となって

記憶の意志を繋いでゆく

ひとつの手帳は

唯ひとつの誓いであり

すべての世界への誓いである

空の遥か、尾根を仰ぐ

瞳は明日をじっと見つめている

・・・・・・

空を隔てる境界線を

地を隔てる境界線を

人々を隔てる境界線を

こころは覚えてはならない

ひとつの手帳に込める

幾万人の、幾億人の、ともに。

*****分水嶺より*****

けんみん文化祭ひろしま ’21 作品集収録。

作品はけんみん文化祭ひろしま文芸祭’21HPにて公開されています。

「分水嶺」物事の成り行きが決まる分かれ目。

被爆者健康手帳交付への前進は

歩み続ける大切さを感じる一年でした。

ヒロシマの聲に耳を澄ませて伝えてゆくことのできる

小さな一人であり続けたいと思います。

KotohaMatsuo
  • KotohaMatsuo
  • ことばの港はみえない港。
    日常のさまざまな風景に
    錨を降ろし
    船をやすめ
    柔らかな風を感じる
    穏やかなひととき

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