一枝の白梅

すべての白を数えられたとしても
わたしの名を呼んでくれた数ほどには
ことしも咲いてはくれない

一人暮らしの学生生活を
つまらなくもない風に書き集めては
我家に手紙を送っていた
宛名はきちんと
差出人は簡素に
呼び名だけを記して

返信代わりのあなたの声は
いつもきちんと午前七時で
今日の忘れものはないかと
モーニングコールに足される
心配性のあなたのおもいは
いまでも朝の紅茶に必要な
一個分ほどの角砂糖

さいごの手紙は書かないまま
一緒にいきたかったと
庭の白梅を別れに添えて
スケジュールに沿って日本を発った
青空に向かう枝先から聴こえてくる
早春の声に忘れものはないから
午前七時のモーニングコールは
だからもう鳴らない

数えることのできない
すべての白はどこまでも
馥郁と香り
消えることのない空に
一枝の雲

          Kotoha Matsuo

2025年2月19日 

今年の梅は空に届く高い枝に 一輪。

(届いたメールには「一輪の梅の花を、見つけてみてください」)

記憶のないころから、わたしの名前を呼びかけて

わたしを育んでくれた大切な人たちへ。

あの日の庭の梅は帰りを待っていたかのように枝々に真白に咲き雪の装いでした。

去年の白梅 (2024.2.6)

KotohaMatsuo
  • KotohaMatsuo
  • ことばの港はみえない港。
    日常のさまざまな風景に
    錨を降ろし
    船をやすめ
    柔らかな風を感じる
    穏やかなひととき

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