よつつじ
10/16/2021(土)
05/02/2023(火)
夕焼けに落ち着く時間に
学生鞄を手に駅に降りる
夕陽は線路を越える陸橋の真ん中で
真っ直ぐに延びる線路に
橋の影をうしろにずらし
美しいよつつじを描いて
今日と明日に再会の約束を結んだ
むかしながらの駅長に
定期をみせて改札口を抜けると
むかしからの友人が
石段の真ん中あたりで
おかえり
と声をかけてくる
学生鞄の鈴は軽く跳ねて
ちりんと小さな音がした
百年経ったら戻ってくるね
と駅舎の松のそばで
再会の約束を結んだ
懐かしい声を聴いた気がして
後ろを振り返った
いつかの休日の
夕焼けにはまだほど遠い時間に
真っ直ぐに長い線路の陽炎を
陸橋の真ん中で眺めている
橋の影はぶれたままになっていて
待っていても
よつつじ駅はもう現われなかった
(よつつじ(四辻)より一部)
振り返る景色は優しく、温かく、切なくて。