うちがわに広がりをもつもの
07/11/2025(金)
07/13/2025(日)

折々の詩誌NO.65 2025年7月1日刊
今回ははじめて、書評を書いています。
河野俊一さん詩集『ストーマの朝』より
かなしみとは
そんな家のようなものだ
光をとおして
うちがわに広がりをもつもの
そしてその中で
空気だけを刻んでいる時計が
固くうつむく
(「美しい家」より 部分)
美しいのは病院の窓だ
しかし
外から眺めるのか
内から眺めるのかで
通り過ぎるものの速さが
違って見える夕方もある
(「生きること 窓」より 部分)
生と死の痛みは、いのちの愛しいかなしみである。
鼓動する生の時間のなかに、背中合わせのように
透明な死は一緒に生きている。
美しい家で夜明けを待ち、美しい窓から
夕日を見つめる人は、朝を「おはよう」と抱きしめている。