うちがわに広がりをもつもの

折々の詩誌NO.65 2025年7月1日刊

今回ははじめて、書評を書いています。

河野俊一さん詩集『ストーマの朝』より

かなしみとは
そんな家のようなものだ
光をとおして
うちがわに広がりをもつもの
そしてその中で
空気だけを刻んでいる時計が
固くうつむく
(「美しい家」より 部分)

美しいのは病院の窓だ
しかし
外から眺めるのか
内から眺めるのかで
通り過ぎるものの速さが
違って見える夕方もある
(「生きること 窓」より 部分)

生と死の痛みは、いのちの愛しいかなしみである。

鼓動する生の時間のなかに、背中合わせのように

透明な死は一緒に生きている。

美しい家で夜明けを待ち、美しい窓から

夕日を見つめる人は、朝を「おはよう」と抱きしめている。

KotohaMatsuo
  • KotohaMatsuo
  • ひとつの出会いに
    ひとつの言葉に
    心 救われることの
    確かさを 信じて

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