『おおはくちょうのそら』へ

幼いころ 抱えきれない 一冊の空色の絵本があった

なんども きいて 哀しみは空に映ることを知った

なんども ふるえて 悲しみを空に描くことを知った

なんども ないて 人間の涙と愛しみを覚えていった

そらに うかびあがる おおきな しろいつばさを

瞳の奥に留めつづけて 大人になった

抱えきれない悲しみに 涙するたびに

抱えきれない哀しみに 寄り添うたびに

そらに あなたのすがたを 重ね合わせる

静かな夜に 一冊の空色の絵本をそっと思う

わたしたちは うつくしい そらを 抱えて生きている

(絵本・児童文学研究センター 第31期修了記念文集に寄せて)

一冊の絵本に、一つの言葉に、心救われることの尊さを噛みしめながら。

こどものころに出会い、いのちへの大きな根幹を育んでくれた

一冊の絵本に感謝の気持ちを込めて。

絵本の想い出より 

*『おおはくちょうのそら』手島圭三郎 絵・文 絵本塾出版  

KotohaMatsuo
  • KotohaMatsuo
  • ことばの港はみえない港。
    日常のさまざまな風景に
    錨を降ろし
    船をやすめ
    柔らかな風を感じる
    穏やかなひととき

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