竹


まっすぐな竹が
木漏れ日をまっすぐに割って
きらきらと眩しかった

心に迷いがあるときは
まっすぐなものが羨ましくなるものだと

風は囁いて
わたしたちを揺らした

わたしは
あなたが羨ましかったのでしょうか

いいえ

風の囁きに
気がついただけなのです

あなたの枯れ落ちた葉が
あしもとを包み込み
わたしとして伸ばしていたことを

わたしの枯れ落ちた葉が
ねもとを包み込み
あなたとして伸ばしていたことも

木漏れ日の揺れる地面に
気がついただけなのです

まっすぐに曲がったあなたのすがたに
まっすぐに曲がっているわたしのすがたに

風はあたまを撫でて
わたしたちを揺らした

「竹」/詩集『ひとつのりんご』より

KotohaMatsuo
  • KotohaMatsuo
  • ことばの港はみえない港。
    日常のさまざまな風景に
    錨を降ろし
    船をやすめ
    柔らかな風を感じる
    穏やかなひととき

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